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蓬田紀枝子句集『黒き蝶』

 

深まる句境

阿部みどり女に師事し、昭和20年「駒草」に入会して七十四年。

戦後俳句のさまざまな潮流のなか、着実な歩みを重ねてきた著者の

最新句集。眼前の景と自身の生活をこまやかに切り取った身辺詠に、そこはかとない余韻が漂う。句集名となった句は、

黒き蝶庇をくぐる夕立かな

東日本大震災と決して無縁とは言えない夫との死別。あとがきには、「夫の亡くなった日の夕方、ふっと黒い小さな蝶が庇から中に入り込んだ。錯覚のようでもありいまだに判然とはしないが、〈黒き蝶庇をくぐる夕立かな〉」の一句があり、このたびの句集名とした。」とある。黒き蝶は、いましがた旅立った夫の化身か。

「駒草」顧問の第5句集。

発行:2019年11月16日
装画:菊池勝子

装丁:真田幸治

四六判ソフトカバー 188頁
2500円+税

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◆自選12句

北窓を開き背文字を覚ましたる

家移りへ鰻屋のくる春夕焼

菊の香の葉より立ちたりみどり女忌

失つてしまへば兄に積もる雪

梅白し山かたむけて余震くる

黒き蝶庇をくぐる夕立かな

焼かれつつ魚の勢ふ深雪かな

弟の逝くとふ日記始かな

探し物してゐるうちに牡丹雪

いくつかの鉢に水遣る小晦日

<著者略歴>

蓬田紀枝子(よもぎた きえこ)  
昭和5年、仙台市生まれ。昭和20年阿部みどり女に師事、「駒草」入門。平成6年から15年まで「駒草」主宰を継承し、現在顧問。句集に『野茨』『一文字』『青山椒』『はんてんぼく』がある。

現在、俳人協会顧問、日本現代詩歌文学館評議員、日本文藝家協会会員。